大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)2056号 判決

〔抄 録〕

控訴趣意第二点について。

所論のように原審において弁護人の証人水野茂孝の取調請求を却下しているが、右は既に取調べられたる証拠により弁護人申請の如き趣旨にて水野茂孝を証人として再び取調べる必要がないものと認められるから右は妥当な措置であり、固より所論のように唯一の証拠方法を却下したものではない。又原審第二回公判調書には「弁護人は証人水野茂孝の供述の証明力を争うため次回証人として石川半四郎の取調を請求したいと述べ追つて弁護人側の人証の請求は書面を以てしたいと述べた」と記載され、原審第三回公判調書には「弁護人は別紙証人申請書に基き証人石川半次郎外七名の取調を請求した」旨の記載があり右石川半四郎とあるは石川半次郎を指すものと解せられるが、右第二回公判調書によつては弁護人より同公判において証人石川半次郎の取調の請求をしたものとは認められないから、此の点に関する所論の理由のないことは明白である。次に本件横領の場所が起訴状には千葉市市場町百二十九番地仲村城一郎方及び市原郡五井町玉前八十二番地時田徳太郎方となつているのを原判決には何れも同所附近となつていること、本件横領の金員が起訴状には増額保険料となつているのを原判決は補充保険料としていること並びに之について訴因変更の手続のなされていないことは所論のとおりであるが右の如き差異は未だ訴因の同一性を失わしめるものとは解し難く(本件補充保険料の横領が業務上の横領となることは前記のとおりである。)且つ所論のようにこれがため被告人の防禦権の行使に支障があつたものとは認め難い。

又被告人の業務の範囲についても原判決は起訴状記載の範囲内においてその内容を具体的に詳細に記載したに止まり、両者の間に訴因の変更はなく従つて原審において右の諸点について訴因変更の手続がとられなかつたのは正当である。原判決には所論のような訴訟手続に違背した点は存しない。論旨はいずれも理由がない。

註 本件は量刑不当で破棄。

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